同一労働 同一賃金とは?

公開日:2023/12/08  

給料

2021年4月の法改正により、すべての企業が働き方を理由に不合理な待遇格差の是正を求められるようになりました。これは「パートやアルバイト、派遣社員であっても同じ労働内容であれば、同じ賃金を支払うべき」という考え方からです。

この記事では、同一労働同一賃金について詳しく解説します。雇用形態による格差に悩んでいる人は、ぜひこの記事を参考に、待遇について事業主と相談してみてください。

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは「雇用形態に関わらず、同じ仕事内容に対しては、同じだけ賃金を支払うべき」という考え方です。

以前は、正社員のような正規雇用の労働者と派遣やパート、アルバイトなどの非正規雇用の労働者では、同じ仕事内容であっても不合理な賃金格差が存在していました。このような賃金格差は、パートタイム労働者法といわれる法律や労働契約法第20条の規定により禁止されていましたが、中小企業は対象外でした。

しかし、2021年4月の法改正からパートタイム・有期雇用労働法に統合されたことで、中小企業も含めたすべての企業が同一労働同一賃金の対象になっています。また、法改正に加え、派遣労働者や有期雇用労働者も含めて賃金格差を解消するためのガイドラインも設定され、基準やルールがより明確になりました。

目指す働き方

同じ企業内であれば、雇用形態に関わらず、納得できる待遇を得られ、働き方を自由に選択できる社会を目指しています。

労働者派遣法や労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法が同一賃金同一労働に向けて改正されたことによって、福利厚生や教育研修などのすべての待遇についても均等・均衡にすべきという内容も明記されるようになりました。

これによって、働き方による不利益を被らないように法的な効力が発揮されるため、非正規社員の待遇を改善する効果が期待できます。

雇用形態による格差がなくなれば、ワークライフバランスを重視した働き方も実現可能です。また、非正規社員であっても積極的にスキルアップに挑戦できるでしょう。

しかし、待遇を平等にするには社内制度の見直しや整備に労力がかかるため、抜本的な制度改革には時間がかかる傾向にあります。

同一労働同一賃金に向けて労働者がすべきこと

平等な待遇を実現させるためには、労働者も自分の待遇が不当なものでないか確認する必要があります。同一労働同一賃金に関する法律やガイドラインをしっかりと確認しましょう。

そのうえで、自分の現在の待遇を事業主に確認し、説明を受けるのが重要です。万が一、待遇の違いについての説明を受けられない場合は、各都道府県の労働局に無料で相談できます。

また、待遇改善を進めていく際に、職場とトラブルになってしまったケースでも解決のサポートを受けることが可能です。現在の待遇に不満を抱えている人は、ひとりで抱え込まずに専門の部署や国の機関に一度相談してみましょう。

待遇の確認

法改正により働き方による不合理な格差は禁止されていますが、すべてのケースに該当するとは限りません。対象となる待遇に制限はありませんが、労働内容や時間によっては問題にならない可能性もあります。

たとえば、非正規社員が正規社員の半分の労働時間であった場合、成果や業績に応じた基本給を設定している会社であれば、その成果に応じた基本給が支給される場合がほとんどです。また、賞与に関しても同様ですが、業績への貢献に関わらず全員に支給すると定めている場合は、非正規社員にも支給する必要があります。

基本的に、仕事内容や責任の重さに違いがなければ、同一労働同一賃金の対象になるため、明確な理由もなく待遇に差があるなら、改善を交渉してみるとよいでしょう。

待遇改善のために受けられるサポート

待遇改善を訴えたとしてもスムーズに改革が行われるとは限りません。要望を全く聞き入れてもらえない人や交渉がまとまらず悩んでいる人は、各都道府県の労働局に相談しましょう。

具体的には、働き方による不合理な待遇差についてや福利厚生施設の平等な利用についてなどの解決のサポートを受けられます。ただし、ほかの行政機関に相談しているケースや裁判を行っているケースでは、制度を利用できない可能性があるため注意しましょう。

サポートを受けたい人は、都道府県労働局の雇用環境・均等室への連絡が必要です。申立書や申請書などの用意は不要であるため、気軽に相談できます。

その後、連絡を受けた担当者が、労働者と事業主に話を聞くことで、解決に向けての助言を受けられるでしょう。

同一労働同一賃金のために事業主がすべきこと

待遇を平等にするために、事業主としてどのように対応すべきか悩む担当者も多いでしょう。改正された法律内容やガイドブックを確認し、必要に応じて専門機関に相談するのもおすすめです。

厚生労働省は、福利厚生・教育訓練、基本給、各種手当、賞与の4つのポイントに分けてガイドラインを作成しています。平等な待遇を考える際は、必ず厚生労働省のガイドラインを確認しましょう。

また、厚生労働省では取組手順書も用意しているため、一つひとつ確認しながら働き方ごとの待遇を見直していく必要があります。

社内点検

社内点検では、従業員の働き方と労働条件を確認します。正社員と比べて労働時間の短いパートやアルバイトの従業員はいるのか、契約期間の決まっている派遣労働者や契約社員はいるのかを調べましょう。

もし、該当する従業員がいない場合は、対応する必要はありません。しかし、将来的に非正規社員を雇う可能性があるなら、労働条件の整備を進めておくのがおすすめです。

労働条件を確認する際は、雇用契約書が法令に遵守しているか、不合理な待遇差がないかを見直します。待遇差がある場合、合理的な理由を説明できるかを検討し、できないものは改善していきましょう。

制度やルールに見落としがないように一つひとつ慎重に見直しを進めていくのが重要です。

就業規則の見直し

賃金体系や就業規則を見直す際には、厚生労働省のサポートが利用可能です。

たとえば、働き方改革推進支援センターでは、小規模事業者や中小企業を対象に専門家による非正規社員の待遇改善に関する相談を無料で行っています。また、働き方改革に関するセミナーへの参加も可能です。

パートや派遣労働者などの非正規社員の待遇改善を実施した事業主は、キャリアアップ助成金を受け取れます。助成金は、対応した内容によってコースが異なるため、厚生労働省のホームページを確認しましょう。

正社員と非正規社員の基本給の現状を確認したい事業主には、職務分析・職務評価の導入支援がおすすめです。現状を把握することで、賃金制度の見直しがしやすくなる傾向にあります。

見直し後の検証

平等な待遇を実現するには、多くの項目を見直さなければなりません。労働者と事業主が納得した待遇にできるように、一つひとつ慎重に取り組んでいきましょう。

待遇改善後の従業員のモチベーションや離職率に変化がみられるかを検証するのも重要です。改善方法や取組方に不安がある人は、働き方改革推進支援センターに相談してみてください。

また、労働者との交渉が上手くいかない場合は、労働局の雇用環境・均等室に相談してみるのもおすすめです。事業主と労働者の双方の話を聞いたうえで、解決に向けた助言をしてもらえるでしょう。

まとめ

同一労働同一賃金とは、働き方に関わらず、同じ仕事内容であれば、同じ賃金を支払うべきという考え方です。

2021年4月に法改正されたことにより、すべての企業で働き方による不合理な格差の解消が求められています。自分の待遇を確認し、不合理な格差を感じる場合は、事業主と相談しましょう。

万が一、交渉がまとまらない場合は労働局に相談するのもおすすめです。パートやアルバイトなどの非正規労働をしている人は、この記事を参考に、事業主と待遇を見直してみてください。

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